今回、ドラマ「アンナチュラル」では、不自然な死を調べる専門機関「不自然死究明研究所」(UDIラボ)を取り上げます。日本では、死因不明の遺体の解剖される割合は、わずか12%といわれ、この数字は先進国の中でも最低水準のもの。ほとんどの遺体が解剖されずに、火葬されているんですよね。
ちなみに、日本での死因不明の遺体への解剖率は大変低いのに対し、アメリカでの解剖率は50%、イギリスでは40%、そしてスウェーデンではなんと90%といわれ、日本の「解剖後進国」ぶりは明らかですね。
石原さとみちゃん
素敵な写真ありがとうございます!!#アンナチュラル #窪田正孝 pic.twitter.com/4VeQMXQ4Rp— みき (@8810miki) 2018年1月12日
その根幹にある原因のひとつ・・・それが、まず解剖を行える法医学者の絶対数が少なく、わずか百数十名しかいない事実・・・ 経済面などでは、日本は先進国なんですけどね・・・
今回、ドラマ「アンナチュラル」に登場する「不自然死究明研究所」(UDIラボ)という組織は「公益財団法人」という設定です。が、当然「架空」の組織です。
不自然死究明研究所は海外にあるのか?
今回、ドラマに登場する”不自然死究明研究所=UDIラボ”は、UNNATURAL DEATH INVESTIGATION LABORATORYの略・・・
では、海外には、「不自然死究明研究所」のような組織はあるんでしょうか?法医学と科学捜査の先進国である、アメリカの実情をしらべてみました。
結論からいうと、さすがに、「不自然死究明研究所」あるいは、それに相当する組織はありませんでした。
ただ、不自然な死を調べる専門機関=「検死」を行う機関は当然のことながら各国にあるのですが、日本とアメリカでは組織の形態が大きく異なります。
日本の実情というのは、現場で異状死体があった場合、それを見て「その死に事件性があるかどうか」を判断するのが「検視官」です。さらに、死亡確認や死因・死亡時刻を見極める検案や解剖を行うのは、「警察」そして検察から委託された「法医学者」や「監察医」といった役割分担となっています。
ちなみに、これらの方々は、その所属先が「警察」、「大学内の法医学教室」また「監察医務院」と分かれているのが実情です。
つまり、その分担は細かく枝分かれしており、横との連携が取れにくい仕組みになっているわけです。
Wall mounted autopsy stations, autopsy carriers and elevating dissection carts installed at the Unified State Lab in Salt Lake City, UT pic.twitter.com/WKf00TTQTV
— Mortech Mfg. (@MortechMfg) 2016年12月15日
一方、アメリカでは、大抵の州では、「検死局」は捜査機関から独立した組織となっています。また、これは、アメリカの州法によって定められているのですが、局の検死医、病理学者、法医学者たちが、死因不明の遺体を調べる権限を与えられていて、「解剖」などにより死因を追及していくんですね。
つまり、アメリカの「検死局」に所属する【検死官】は、日本でいうところの、検視官、鑑識、科捜研、法医学者、監察医といった役割をまとめて一手に引き受けてこなすという組織形態になっているわけですね。
got to meet the head coroner, investigators, check out some evidence, and see all of the autopsy stations. i love my job! pic.twitter.com/tCRcza7Oek
— Ren (@rensch025) 2017年2月7日
ドラマ「アンナチュラル」で、今回、石原さとみさんが演じる解剖医の三澄ミコトは、「解剖医」。
それと比較すると、死因究明の調査権限が一極集中しているアメリカの「検死局」の権限と力は大きいですね! それだけ権限が一極集中的に与えられていることで、柔軟で素早いアクションを取ることが可能なわけですね。
海外版の「検死局」の実態を知りたい場合は?
前述のように、組織形態が異なることが理由で、日本とアメリカで同列には語れないとは思うのですが、こういった法医学の部分にスポットを当てたドラマや映画は増えていますよね。
個人的に、こういった死因究明=検死官やモルグ(検死のために、一時的に死体を安置しておく場所)の実態などを描いたドラマは、恐らく1990年代にバカ売れした、アメリカの女流作家「パトリシア・コーンウェル」の小説の影響が大きいと思います。
My new chase plane friends Sandie-1 Sandy-2 @NASA_Langley 🚀💥♥️ pic.twitter.com/Egr4GztUTg
— Patricia Cornwell (@1pcornwell) 2017年11月29日
その小説の中では、主人公のヒロインである”ケイ・スカーペッタ”が検死官として、様々な不可解な死因の真相を究明するというスタイルで話が展開されました。それにより、それまでは、どちらかといえばマニアックな世界&領域だった、検死官やモルグといったことばや職業の実態を日本に広めたと思います。
作家であるパトリシア・コーンウェル自身も美しく、格好良い生き方を実践されていて、魅力的な方だと思います。
Anyone wanna guess what I’m doing? @NASA_Langley pic.twitter.com/MaHlO3G3wR
— Patricia Cornwell (@1pcornwell) 2017年12月4日
個人的には、「パトリシア・コーンウェル」の小説である「検屍官」はけっこうオススメです。ケイ・スカーペッタもその才色兼備ぶりで、魅力的に描かれています。また、抱える葛藤、プライベートな生活の中で直面する様々な困難なども書かれていて、登場人物に思い入れができると思います・・・
さらに、サスペンス的な要素も盛り込まれ、主人公以外の登場人物ひとりひとりの描き方が雑でなく、丁寧に描かれており、情景が目に浮かぶ描かれ方がされています。そのあたりもオススメポイントかな~と思います。
ドラマでいけば『CSI:科学捜査班』、『ボディ・オブ・プルーフ 死体の証言』などは、まさに検死のミステリーを明かしていくという意味で、見ごたえのあるドラマでした。。
まとめ
ドラマ「アンナチュラル」に登場する専門機関「不自然死究明研究所」(UDIラボ)は、実在こそしてはいませんが、現状の組織の構造に警鐘を鳴らすと同時に、法医学の理想を形にしたようなドラマだと思います。
どうしても、日本の組織はどれも、縦割りの官僚型のものになりやすいですが、この「不自然死究明研究所」のように警察庁と厚生労働省、全国の医大がネットワーク化されているというというのは、不公正を抑止できるものですし、かつ死因究明を行えるという、ある種組織としての理想形ですよね。
ドラマを楽しみましょう!
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