この出来事が起こったのは、今から約3年前のことです! アメリカ・ニューハンプシャー州の、とあるスーパーマーケットに対して、200万人もの住民が抗議活動を行いました。その要求の内容とは「アーサー・Tを返せ!」というものでした。(アンビリバボー・11月9日放送)
ここでは、アーサー・Tとはどんな人物か、 なぜ住民が抗議活動が行われる事態になったのか、結果はどうだったのか、アーサー・Tについて詳しく知る方法 を取り上げていきたいと思います。
”アーサーT”とはどんな人物か
アーサー・Tは、アメリカの一大スーパーマーケットチェーン「マーケット・バスケット」に、2008年から就任した「マーケットバスケット」三代目CEOのコトです。
当時の「マーケットバスケット」は、アメリカ北東部・ニューイングランド地方に75店舗を展開し、低価格&低コストを売りとするお店でした。
また、地元の食材を積極的に仕入れ、ウォルマートなど他のどの店よりも安く売ることで、、200万人もの人々は、買い物をする、地元に愛されている店でした。
三代目CEOのアーサー・Tのポリシーは、まずは“人”。つまり、お客さんと従業員を大切にし、商売は二の次という主義。
普通、仕入れ値が下がると、本来は、それを会社の利益にする経営者が多いです。が、アーサー・Tはそうせず、まずお客さんに還元したというワケです。
つまり、仕入価格が下がった分、より安く商品を販売するワケですね。 お客さんにとっては、ハッピーですよね!
アーサー・Tは、また、「会社は社会のためにある」「商売よりも、人々が優先」をいつも公言・・・ 従業員も地元民を積極的に採用し、賃金も世間並より高め、ボーナスや奨学金制度など福利厚生も充実させ、取引先との関係も大切にしました。
会社は成長を続け、実際、アーサーT就任した2008年から6年間で、会社は二桁成長を遂げていきます。
なぜ、住民が抗議活動が行われる事態になったのか
では、なぜ、そんな人としても経営者としても、素晴らしいアーサー・Tを取り戻すべく、住民が抗議活動が行われるような事態に至ったのでしょうか?
その理由は、典型的な”お家騒動” !この、”お家騒動”というワード最近聞いたことないですか?
そうです、大塚家具の”お家騒動”です。分かりやすくいえば、大塚家具の”お家騒動”のアメリカ版です。
さて、当時、「マーケットバスケット」のCEOはアーサー・Tだったワケですが、役員で従兄弟のアーサー・Sが取締役会を牛耳っていました。
(アーサー・S)
さらに、アーサー・Sは、株式50.5%を持っている人物でもありました。性格は、人情派のアーサー・Tと真逆で、アーサー・Sは打算派でした。
アーサー・Sは、長年アーサー・Tのやり方に不満を持っていました。
アーサー・Sのポリシーは、利益はできるだけ自分のものにしたいというもの。アメリカでも嫌われる典型的MBA上がりの性格と経営ポリシーでした。
彼は、同族株主の利益だけを追及していて、店舗数が71に増えて利益が増えたのに、同族株主への配当が少ないと不満を漏らし、怒りました。
そこで、2014年6月、従業員よりも同族株主の配当金を多くしたいと考えた、アーサー・Sは取締役会を行い、その場の議決で、アーサー・Tを解任して追放しました。
で、アーサー・Tの去った、「マーケット・バスケット」はどうなったのでしょうか?
後釜として雇われたのは、外部招いた2人のCEO・・・ 1人は経営した有名企業を売却するほどにボロボロにした人物でした。
アーサー・Tを愛していた人々は黙っていなかった
さて、アーサー・Tがクビになった後、「マーケット・バスケット」を愛する人々が、アーサーTを取り戻すべく、前代未聞の抗議活動を起こします。
社員がボイコット
はじめに、本社の幹部8人がボイコットを始め、すぐに解雇されました。でも、この首をかけてもボイコットをするとかスゴイ勇気ですよね・・・
続いて、店の従業員も仕事をボイコットして、プラカードや顔写真を手に「社長を取り戻せ」とデモを始めました。
配送センターの従業員やトラックドライバーもボイコットし、やがて取引先からも商品が納品されなくなりました。
結果、店の売り場は空っぽ状態に・・・・
(実際の当時の店内の画像)
お客さんもボイコット
今度は、地元のお客さんが「アーサー・Tがいない店では買い物しない」と買い物をボイコットしました。
ウォルマートなど他のスーパーで買い物をしたレシートを「マーケット・バスケット」店に貼りつけて、「今日あなた達はこれだけ損をしましたよ」というメッセージを伝えます。
フェイスブックやツイッターでも抗議運動は広がりをみせ、いいネが9万件もつきました。
Save Market Basketさんの投稿 2013年7月16日(火)
全米も黙らなかった
これら抗議の動画が、Youtubeに投稿され、結果的に200万人以上の人々による、巨大な抗議運動が行われ、全米騒然のニュースとなる結果に・・・
こういった、「善と悪」の構図ができてしまうと、加速化し、もう動きは止まりません!
結末はいかに?
抗議運動は、実に、約2か月にもわたり、多くの人々を巻き込みました。
その影響は、さらに大きくなり、納品業者が、州知事に掛けあう事態になり、マサチューセッツ州とニューハンプシャー州の知事が解決交渉に動き出すことになりました。
結果として、アーサー・Sと親類が保有していた55.5%の株式を、アーサー・Tが15億ドルで買い取ることで、ようやく事態は収束しました。
しかも、この15億ドルを貸し出したのは、アーサー・Tを愛し支持していた、地元有志・店の支持者・投資会社などでした。
さて、アーサー・T がCEOに復帰すると、社員もお客さんも戻り、お店もやがて活気を取り戻します。
アーサー・Tは本社前で、トラックの荷台からスピーチを行い、社員とお客さんたちの抗議活動に感謝しました。
そして、”働く人にとって誇りと尊厳ある職場を提供すること、その文化を守ることが人の道であり企業の社会的責任である”という名言を残します!
アーサー・Tの漢気は素晴らしいですね! また、従業員にしろ、お客さんにしろ、それを本当に分かっているということですね。
アーサーTについて詳しく知る方法
このような、全米を騒然させた、奇跡のスーパーマーケットの記録を読むと元気が出ますよね! 解任された社長を取り戻せ!従業員と200万人の地元住民が巻き起こした痛快逆転劇が分かりやすく、この本には、収められています。
◆◆奇跡のスーパーマーケット / ダニエル・コーシャン/著 グラント・ウェルカー/著 太田美和子/訳 / 集英社インターナショナル
「アーサー・Tを返せ!」という、地元の住民、またその輪はやがて全米にまで広がるそのスケール感はただ者じゃないです!
リアルだからこそ、伝わる迫力が、読むと目を離させません!
まとめ
あの、大塚家具の一連の騒動にしても、日本でもかつての義理や人情がなくなり、従業員やお客さんが置き去りにされて、大事なものが見失われているケースも増えているかもしれませんね!
アーサー・Tのブレない信念は、大変勇気を与えてくれるものだと思いました!